自民党の吉野正芳元復興相(76)は30日、次期衆院選に出馬せず、今期限りで政界を引退すると正式に表明した。いわき市で開かれた後援会の会合で後援会幹部が吉野氏の意向を伝えた。吉野氏は健康上の理由で国会に長く登院しておらず、今回の会合にも吉野氏は出席しなかった。
会合では、進退の表明について吉野氏から要請された斎藤公男連合後援会長が、後援会の出席者に不出馬の意向を伝達。吉野氏は理由として、選挙で有権者に公約や政治信条を訴えることを完全にやり遂げる確信を持てないことを挙げ「次の総選挙に出ない決心をし、後進に道を譲る」との考えを示したという。後継指名は行わず、次の候補者選定にも関与しない、との方針も伝えられた。
吉野氏はいわき市出身。早稲田大商学部卒。県議を経て2000年の衆院選で初当選した。原子力問題調査特別委員長、東日本大震災復興特別委員長などを歴任、17年4月~18年10月には復興相を務めた。
「使命」本県復興に力
政界引退を正式表明した自民党の吉野正芳元復興相(76)=衆院旧福島5区、8期=は、東京電力福島第1原発が立地する双葉郡を抱える衆院議員として本県復興に尽くしてきた。30日の後援会幹部会に吉野氏本人の姿はなく、静かな終幕を迎えた。
「次の総選挙には出馬しない」。斎藤公男連合後援会長は会合冒頭、吉野氏の決断を代弁した。本人の体調不良は深刻で、会話は難しい状態。決断理由に選挙活動を十分できないことを挙げた上で「復興・創生の途上にある古里の現状を鑑みると、誠に悔しく残念な思い」と胸の内を明かしたという。
吉野氏は、復興相として復興庁の設置期限延長を提起したほか、避難者支援拠点の充実に取り組んだ。復興相退任後も福島国際研究教育機構(エフレイ)の設置に尽力するなど、双葉郡を選挙区に持つ自身の「使命」としていた本県復興に力を注いできた。
ただ昨秋以降は国会を欠席し、党県連幹部でさえ面会できない状況が続いた。
早期に選挙態勢を構築したい県連は昨年から調整を続け、今年8月9日、党総裁選後に進退表明する方向で吉野氏側と合意。衆院解散を目前に控えたタイミングで実現に至った。
県連は次期公認候補を元県議の坂本竜太郎氏(44)に内定したが、父の故剛二氏はかつて吉野氏と旧福島5区の公認を争った関係にある。吉野氏は後継者を指名せず、坂本氏支援の考えを問われた斎藤会長は「全く決まっていない」と言葉少なに語った。